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最近の道路交通法改正 ~自動車の自動運転技術の実用化に対応した運転者などの義務に関する規定の整備~

  • kenzii
  • 2020年4月8日
  • 読了時間: 5分

2019年12月1日に施行された「改正道路交通法」で大きな話題となっている改正項目のなかに、「自動車の自動運転技術の実用化に対応した運転者などの義務に関する規定の整備」に関する改正があります。今回はこの法令の内容と「自動運転」の定義などについて紹介します。

このコーナーでは、ドライブやカーライフに関する一般的な情報をご紹介しております。個別のご質問につきましてはコメントとしてご投稿いただいても、弊社から回答をさしあげることはできません。あしからずご了承ください。

自動運転レベルの定義

近年、ニュースや自動車メーカーのCMなどで「自動運転」というワードが頻繁に登場し、クルマがドライバーの代わりにすべて運転操作をしてくれるSF映画のような時代が訪れたかのように感じてしまいます。今回の改正内容について解説する前に、まずはクルマの自動運転の「レベル」の定義について説明しましょう。

自動運転レベルは人(ドライバー)と車両(システム)が担う運転操作の比率や走行可能エリアの限定度合いなどによって、レベル0からレベル5までの6段階に分類されており、2020年1月現在、量産販売車で実用化されているものは、車両システムが「アシスト」してくれる「レベル2」段階までのものになります。つまり、現状では車両システムが運転のほとんど、もしくはすべてを担当してくれるクルマはありません。 しかし、現在クルマの自動運転技術の開発は世界各国の自動車メーカー間で競われるように急ピッチで進んでおり、2020年中には「レベル3」を実現した車種が登場するのではと予想されています。

自動運転レベル3時代を見据えた法改正

実はこれまでの日本の道路交通法では、自動運転レベル3を超える車両に対する規定が存在していませんでした。これは世界的にも急務とされている問題で、現在各国で同様の法整備が進められています。 今回の「改正道路交通法」は、自動運転レベル3車両の実用化に対応した車両定義やドライバーの義務などの基本的な規定を明確にしたもので、その内容を簡単にまとめると以下の3点になります。

1.自動運行装置の定義等に関する規定の整備

自動運転レベル3で、車両システムが運転している際の事故責任者は、車両販売メーカーではなく運転者になる。

2.作動状態記録装置による記録などに関する規定の整備

自動運転車両には作動状態記録装置の装着が必須となる。また、警察官が整備不備車両に該当すると認めた車両の運転手は、警察官の求めにより自動運転システム(自動運行装置)作動状況の記録内容を提示する義務がある。

3.自動運行装置を使用して自動車を運転する場合の運転者の義務に関する規定の整備

自動運行装置に係る使用条件を満たさない場合においては、当該自動運行装置を使用して自動車を運転してはならないこととする。 また、同時に「道路運送車両法」の改定も行われており、自動運行装置の保安対象装置への追加、点検や基準適合性検査関係の法整備、改変プログラムなど改造に関する許可制度の創設などが盛込まれています。 なお、それぞれの細目については年内または数年間で検討・整備するということになっていますが、国土交通省は2020年度内に自動運転レベル3車両の公道走行を実現したい意向のようです。なお、現状の自動運転レベル3車両についての規定概案では、自動運転レベル2までの車両とは異なり、車両システムからの要請に即座に対応できる状況であればスマートフォンや車載テレビの閲覧など認められるとされていますが、このあたりの実際の交通違反規定の内容がどのようなものになるかについても注目されています。

先進技術が搭載されていても過信は禁物

2019年2月に国際欧州経済委員会(ECE)が、日本や欧州連合(EU)など40ヵ国・地域で「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」の導入を義務付ける規則の原案に合意しています。それを受けて、2019年12月に国土交通省から、国内メーカーが2021年11月以降に販売する新型乗用車(軽自動車含む)に衝突被害軽減ブレーキの搭載を義務付けると発表されました。 近年、衝突被害軽減ブレーキ搭載車の普及に伴って、追突事故の割合は大きく減少しています。しかし、米国などでは自動車メーカーによる「半自動運転」という宣伝フレーズを過信した無謀なドライバーによる重大事故が頻発しており、日本でも衝突被害軽減ブレーキや自動追従装置(追従型クルーズコントロール)などの誤作動・過信が原因とみられる追突事故が増加しています。 クルマの安全装置や自動運転装置の機能には限界があり、状況によっては正しく作動しないケースもあります。どんなにクルマの先進技術が進化しても、安全運転の責任はあくまでドライバー本人にあるということをしっかりと認識して運転することが大切です。

私たちの生活になくてはならない存在であるクルマですが、急速に進化を遂げる自動運転技術により、クルマと交通安全をとり巻く環境が大きく変わろうとしています。この自動運転をめぐる世界的な動きは、各国政府および自動車メーカーなどの思惑が絡んで激しい開発・実用化競争となっているのが実情です。しかし、まずは自動運転に関するしっかりとした法整備と、現状の自動運転技術の限界の周知のための正しい情報提示が行われることに期待したいところです。

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